中心には自然光が充分入り込む6層で吹き抜けのアトリウムがあり、建物の性格の決定づける大きな要素となっている。照明計画ではアトリウム、執務スペース、リラックス・スペースの3つの場所の光の色を積極的に使い分けることによって、ダイナミックな空間の変化と、光の色の変化に応じた気分の切り替えの2つを図った。
執務スペースの照明は、昼間の自然光に馴染みの良い色温度5000ケルビンの蛍光灯で、照度も高い。これに対して、リフレッシュ・コーナー、バー・コーナー、社員食堂などのリラックス・スペースの照明は、3000ケルビンのハロゲンランプとコンパクト蛍光灯を使い、照度も抑えて温かみのあるくつろいだ雰囲気にした。
それでは、この2種類の空間をつなぐアトリウムの光はどうあるべきか。執務空間と同じ色温度の高い光では、せっかくの空間が目立たない。かと言って色温度の低い光だけではホテルのロビーのようでくだけすぎてしまうし、執務スペースの色温度の高い光との違和感も強いだろう。接客スペースでもある以上、ちょっと違う印象を与えたい。自然光が入るとは言え、打ち合わせテーブルでは図面の小さな文字が読める明るさも必要である。以上の点を検討した結果、アトリウム空間の基本設計は、食堂やバーよりも少し色温度の高い領域の3500ケルビンのメタルハライドランプを使い、執務スペースとリラックス・スペースのどちらにも馴染む空間とした。