玄関ホールを過ぎると、極彩色の木彫板があでやかな回廊から、招きの大門を経て、雅叙園の中心施設ホテル・バンケット棟に至る。招きの大門は建物の中に作られたホテル・バンケット棟への入口である。
回廊から招きの大門への照明計画は、敷地の関係からホテル・バンケット棟へのアプローチが長くなってしまったのを逆手に取って、これから始まる宴の舞台へと人々の心を徐々に高揚させていく光をつくることにあった。回廊に足を踏み入れると、まずトップライトが入っているような明るさに驚くことだろう。そして次に歌麿の浮世絵のような、極彩色の木彫板の一つ一つの物語に引き込まれていく。大きくカーブした回廊の光は、先へ先へと力強く人々を誘導する。その先に現われるのは暗く静まり返った水面に、重々しく姿を映す招きの大門。うきうきした気分が一瞬引き締まる。くっきりと明るい門の中。そして奥に垣間見える、明るく華やかなホテル・バンケット棟。
両側の池には水中照明が埋め込まれ、通路と池とを区切っている。天井にはメタルハライドランプのダウンライト2台と、ハロゲンランプの埋め込みスポットライト2台だけを設置し、暗い夜空のような空間の中に、どっしりとした屋根と金色に輝く彫刻を浮かび上がらせている。
ドラマチックな明るさと暗さを交互につくることにより、長いアプローチというマイナス面をプラスに転換して、目的地への期待感を盛り上げる場所にすることができた。