作品名

東京芸術劇場改修

設計

松田平田設計、香山壽夫建築研究所

受賞

2013 IES/Award of Merit 2013 IEIJ/照明普及賞

所在地

東京 関東地方

竣工

2012年

カテゴリ

劇場・ホール

概要

1990年に開館した4つのホールを持つ劇場施設の改修工事である。

以前は、白っぽい光で大型展示場や駅のコンコースのように無機質に照らされていたアトリウムに、温かみのある光源を採用し、「ゆっくりと滞在したくなる空間」をつくった。また、施設全体としては、光源が見えてグレアがきつい、劇場としての華やかな雰囲気がない、メインホールへの行き方が分かりにくい、白熱灯を使用している場所が多くエネルギーロスが大きいといった改修前の問題を解決するため、1) 劇場の顔となる夜間の景観をつくる、2) メリハリのあるあたたかい雰囲気をつくる、3) メインホールへの行き方を光で示す、4) 省エネルギー化を図る照明を計画した。  

設計上の制約としては、東京都の規準にそった高い照度を確保し、指定器具のなかから照明器具を選定することが求められた。  

また、光源としては、主に蛍光灯を使うことで、省エネルギー化を実現した。音響へのノイズが問題となるLEDは、ホール内やホールのホワイエには使用せず、天井高30mのアトリウムに使用した。

改修後の夜間外観。アトリウム全体が光の箱として輝き、「劇場の顔」としての存在感を示している。三角形のトラス屋根のエッジ部分をM形にCDM-T 150W (3000k) 超狭角投光器31台で照らし上げ、アトリウムの形状を強調した。

改修前のアトリウムの大空間は、劇場の華やかさとはほど遠い雰囲気だった。  改修後のアトリウムは、光源を温かみのある色温度のものに変更し、「ゆっくりと滞在したくなる空間」となった。メンテナンスが困難なトラス天井のキャットウォーク沿いにはLED 78W (Ra80、2800k) 投光器41台を設置し、壁面を照らした。  アトリウム入口付近やエスカレーター昇降部などは500lxを確保した。アトリウム全体の消費電力は、改修前の約45%となった。

改修後のアトリウム。床からの間接照明(Hf蛍光灯32W、3000k)で、エスカレーター下の暗がりを軽減した。また、特注のLED照明柱 (LEDランプ5W×5、2700k) は、器具の存在を感じさせることなく、間接光で床面を明るく照らしている。

改修後、イベント時のアトリウム壁面へのカラー投光。非日常的な空間をつくり、利用客の「高揚感」を高めている。

改修後の中ホール内部。改修前は、ダウンライトのグレアが目立ち、空間全体を均一的に明るくした照明だった。改修後も客席天井は既存のまま残されたので、天井裏のキャットウォークから、天井の高さに応じた3種類の配光のハロゲンランプ250W、90Wグレアレスキャップを付けた鏡面反射鏡のダウンライトに交換した。また、新設されたレンガ壁面は、レンガのスリットを100角の埋込型器具(ダイクロハロゲンランプ 30W、13°配光)で照らし上げ、立体感を強調した。

改修後のメインホール広場。改修前は、天井一面にダウンライトが配置された均一的な照明で、天井のフレスコ画がくすんで見えた。天井裏の設備機器は既存位置のままであったため照明位置が限定されたが、グレアレスダウンライト (FHTコンパクト蛍光灯42W、3000k) の配置をまとめて床面に明暗の差をつくり、ホール入口付近を特に明るく際だたせた。フレスコ画の間接照明は、演色性の高いランプ (Hf蛍光灯16W、3000k) に変えて明るく目立たせた。